范十一娘は※城[#「田+鹿」、330-1]の祭酒の女であった。小さな時からきれいで、雅致のある姿をしていた。両親はそれをひどく可愛がって、結婚を申しこんで来る者があると、自分で選択さしたが、いつも可いというものがなかった。
ちょうど上元の日であった。水月寺の尼僧達が盂蘭盆会を行ったので、その日はそれに参詣する女が四方から集まって来た。十一娘も参詣してその席に列っていたが、一人の女が来て、たびたび自分の顔を見て何かいいたそうにするので、じっとその方に目をつけた。それは十六、七のすぐれてきれいな女であった。十一娘はその女が気に入ってうれしかったので、女の方を見つめた。女はかすかに笑って、
「あなたは范十一娘さんではありませんか。」
といった。十一娘は、
「はい。」
といって返事をした。すると女はいった。
「長いこと、あなたのお名前はうかがっておりましたが、ほんとに人のいったことは、虚じゃありませんでしたわ。」
十一娘は訊いた。
「あなたはどちらさまでしょう。」
女はいった。
「私、封という家の三ばん目の女ですの。すぐ隣村ですの。」
二人は手をとりあってうれしそうに話したが、その言葉は温やかでしとやかであった。二人はそこでひどく愛しあって、はなれることができないようになった。十一娘は封三娘が独りで来ているのに気がついて、
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